今年度から始まったみんなで地域づくりセンターの新しい事業「みんなのコト」。地域づくりは、まちの出来事を「自分のコト」としてとらえることから始まります。一緒に「みんなのコト」を考えてみませんか…。
 その第一回目は、5月20日、災害支援のコト、とくに障害のある人への「支援について考える会」を催しました。

みんなのコト.jpg
災害支援.jpg

 災害が起きた時、障害のある人は実際にどんなことに困るのでしょうか。私たちはどんな支援が可能であり、障害のある人はどんな支援が必要なのでしょうか。今回は障害者施設担当者の話を伺い、さらに参加された皆さんで、それぞれの立場から具体的な困難や不安を取り上げ、その解決のために必要な手立てを考えるのが目的です。

 当日は視覚・聴覚障害当事者やそのご家族、精神障害ほか障害者支援施設の関係者、昨年立ち上がった「みんなで災害支援ネットワークの会」メンバー、市民、さらに障害者支援課、浦安市社会福祉協議会など合計36名の方に出席いただきました。

 以下のようなプログラムで進めていきました。

1. 事例報告「障害のある人の支援に必要なこと」
  障害者支援施設に勤務されるお二人から、一昨年の台風での障害当事者の経験や避難訓練の様子など伺い、現実を知ることができました。多くの参加者が熱心にメモを取る姿が印象的でした。

・「台風15号の被害聞き取り調査から思うこと」     
              スピーカー 視覚障害者総合支援センターちば 川崎弘所長
 災害が起きた時、なぜ視覚障害者は避難しないのか…。トイレの問題など避難所での生活上での問題は切実。どこで何があるのかが分かれば不便でも一人で生活ができるので、危険でも自宅を選択する視覚障害者が大半ということだった。自宅避難が困難な場合、親類や友人の家での生活をする人もいたが、その場合は総合支援センターはじめ支援をする側が、安否確認ができずに困った。
 点字を読解できる人は視覚障害者全体の9パーセントであり、支援を受けるにはほぼ音声を必要としている。一昨年の台風15号を機に、支援センター利用者の携帯電話の連絡網を作成し始めた。
 地域のみなさんには、障害者自身の存在を知ってもらいたい。さらに多くの情報から利用者の状況に応じた情報提供やその入手方法について、障害者本人、支援センターの私たち、地域などが一緒に考えていけるとうれしい。

・「避難訓練を通じて見えてきた課題」 
      スピーカー ワークショップ四街道 サービス管理責任者  後藤友紀さん
 ワークショップは、 視覚障害、身体障害、精神障害、知的障害などさまざまな障害をもつ方のための軽作業を中心とした就労訓練を行う福祉作業所。毎年、地震・火災を想定して消防署の立ち合いのもと避難訓練を行っているが、利用者には予告せずに訓練を実施するとさまざまな問題点が見えてくる。たとえば、職員が手薄だった時の利用者の安全誘導や交通機関がストップした時の本人・家族との連絡方法、聴覚障害者の伝達手段など。支援する施設としても災害に対しての検討すべきことと不安はたくさんある。

手話.JPG

2. 参加者全員によるワーク
 事例発表を受けて、参加者全員がそれぞれの立場で災害が起きた時の以下の6つのシーンから ①質問 ②予想される困りごと・課題 ③解決に向けて考えられる方法やアイデアを付箋に記入しました。

シーンその1)被災直後のコト 
シーンその2)障害のある人ご自身の身体のコト
シーンその3)避難所生活のコト
シーンその4)在宅避難のコト 
シーンその5)情報収集のコト 
シーンその6)そのほかのコト

3.意見交換 
 記入した付箋をもとに発表、意見交換を行いました。
 災害が起きた時、そもそも…の質問から、予想される当事者自身の困りごとや不安、そしてそれらを解決に導く方法やアイデアまで多様な考えや意見が飛び交う時間となりました。
 とくに障害当事者からの「複数の障害があるために一人では移動できない、なにかあっても在宅避難をしようと思う」。支援施設からの「当事者への支援の充実を」「そもそも、避難所がどういう場所なのかわからない」。市民からの「高齢者を含め、支援を必要としている人が地域にはたくさんいるはず。どんな支援を必要とする人がいるか、狭い範囲でのネットワークが必要」「障害のある人の支援体制が避難所を運営する側にも周知されていない」など、胸を打たれる意見や対応が急がれる課題などがたくさん示されました。

金室.JPG
のぐちさん.JPG
母たち.JPG

 

 以下はワークでの意見、提出された付箋紙をまとめたものです。

3 災害が起きたとに予想される困りごと_page-0001.jpg


 災害が起きた時、私たちは互いに支え合い連携しあって、一日でも早く元の生活を目指します。しかしその過程で、障害のある人のことを見失う可能性があるのではないでしょうか。
 障害者の困りごとや不安を具体的に抽出することそのものが、改めて地域の課題、そして障害者の支援を「自分のコト」として考えるきっかけになればと思います。

 今回は時間の関係もあり、出された困りごとや意見を検証することはできませんでした。今後センターでは、挙げられた課題をさらに分析し、一つでも多く解決に結びつく方法を皆さんと共に考える機会をもちたいと考えています。同時に「みんなで災害支援ネットワークの会」でも課題を共有し、メンバーの資源や知識を集めてその方法を探っていきます。

最後に参加者アンケートをまとめました。

1. 今回の交流会は参考になりましたか?→ 参考になった・大変参考になった  93.4%
2. その理由は?
 ・視覚、聴覚障害を持っている方,いろいろな立場の方の声を聞けたのが良かった。
 ・啓蒙教育、訓練の必要性を感じた。問題意識を共有し、対応できる人的な底辺を広げたい。
 ・台風15号後、視覚障害者が経験された多くの困りごとの実態が非常にわかりやすく、問題意識を持つきっかけとなった。                      
3. 今回の交流会で新たな気づきや取り組んでみたいと思ったことがありましたか?
         →  あった   93.3%
4. 具体的にどんなことですか?
 ・障がい者の方の情報のさらなる整備。たとえば、市の避難行動要支援者登録制度の充実など。
 ・避難所運営なかで、障がい者の方の参加も提案していきたい。
 ・避難所ってこんなところ、というガイドが具体的にあったらいいなと思った。だれでも安心できる「避難所を作ろう」といったミーティングがあるとよい。
 ・備蓄や避難所開設にあたって、取り入れたほうが良いことなどの確認
 ・行政にしてほしいこともあるかもしれませんが、住民同士でどう支え合えるかということも大事                        
5. 災害支援について「地域の課題」としてどんなことが挙げられると思いますか?
   ・「人と人の結びつき」を災害支援の観点からより緊密にすること。災害に対する危機意識を持たせ、それに対する対応の仕方を普段から考えておく。啓蒙教育・訓練を実施し、自治会、PTA、ボランティア団体などで多くの人に問題意識を共有 してもらう。
 ・ネットワークができたら、いいと思います。自治会とか民生委員とかにも
 ・四街道には「避難行動要支援者避難支援体制整備事業(区・自治会実施マニュアル)」があります。  区、自治会、民生委員の情報としては大切  ですが、具体的に障害者の個々の避難についてはどのようになっているのか、改めて考えました。
 ・自治会でも健常者中心の支援計画が多いので、障害のある人の視点を取り入れることが必要。それは、高齢者への支援にも繋がる。
   ・被救援者と防災対応の方の相互コミュニケーションが必要。被災者への物資の供給体制、ルートは?