11月16日、29名の参加を得て、「みんなで災害支援ネットワークの会」の学習会が開催されました。対面式の学習会の開催がずっと望まれていましたが、長引くコロナ禍でそれもかなわず、このたびようやく開催できる運びとなりました。
今回は「茨城NPOセンター・コモンズとたすけあいの会JUNTOS(ユントス)」の代表 横田能洋さんに講師としておいでいただき、~常総水害に学ぶ災害支援のあり方~と題して、実際の災害支援の現場で起きること、そしてそれをどのように捉え、解決へ結びつけ、どのような教訓を得たのかを学ぶ機会となりました。
今回の学習会の目的は4つ。
1.常総水害において、被災者はどのような困難に直面し、「コモンズとたすけあいの会JUNTOS」は、地元の団体としてどんな手順でどんな支援をすることが出来たのかを知り、
2.今後も予想される自然災害に対して、私たちにはどんな準備や心構えが必要なのかを学ぶ。
3.参加者同士で日頃の活動や災害支援について出来ることの紹介や、他の団体・組織との連携の話し合い。
4.市民、団体・組織や専門家が常に繋がりを持つことが出来、かつ、災害時に有効な繋がりのツールについて。
【講演】「常総水害からの復興と自主防災の取り組み」
講師:茨城NPOセンター・コモンズ、たすけあいセンターJUNTOS代表横田能洋さん
被災者が困ったこと
1.災害ごみの処分 地域の災害ごみ仮置き場を決めておいて分別。
2.どこで過ごすか? 体育館の避難所や親戚の家。(日ごろからの付き合いがあったからこそ)
3.そこまでどうやって行くか? 車が動かないので自衛隊のヘリやボートで ⇒ 高齢者には説得の必要。
4.避難所の現実 ベッドはおろかプライバシーもないが、時間がたてば、お風呂の提供や温かい食事も用意されるようになる。復興と共に避難所が集約され、学校や職場、自宅から離れた場所となることも多く、高齢者には負担になった。空き巣の心配。
5.外国人には避難所の存在すら知らない、分からないこともある。
6.在宅避難の現実 気は使わなくてよいが、住まいとしての機能が消失したために食事やトイレ、ふろが不自由。特に誰とも話せない環境がつらい。
自身が受けた支援から助け合いセンターJUNTOSの立ち上げへ
日本財団等、普段からつながっていた支援組織に助けてもらい、せっかく被災地の中にあるNPOなので、全国からくる方の繋ぎ役になりたい…JUNTOS(ポルトガル語で「一緒に」)が立ち上げのきっかけ
(活動内容)
・災害助成金で高圧洗浄機や一輪車を購入、被災者への貸し出し ⇒ 被災者にJUNTOSを知ってもらい相談を受ける。
・各地からやってくるボランティアの采配。
・中学校へ自転車を寄付。
・在宅避難者の困りごとをデータ化し行政へ提出。
・地域の情報。
・罹災証明の受付や使えなくなった車の処分の方法など)の提供。
・他市の国際交流協会に協力を仰ぎ、ポルトガル語。スペイン語・タガログ語の4か国語で情報誌と多言語ラジオを利用。情報を出すタイミングを鑑みながら配信。
外国人へより広く正確な情報を伝えるには
ある程度日本語が分かるキーパーソンをみつけ、日頃から付き合っておき、その人を介して大事な情報を拡散してもらう。(自動車税のこと、火災保険のこと、避難所のこと)
外国人の防災ガイドを発行(コモンズのHPでダウンロード可能)警察の呼び方、消火器の使い方、などの情報を記入。母国語で警報内容が分かるNHKのサイトQRコードも…。
ボランティア団体への橋渡し役について
毎晩全国より来市した約60の団体との情報交換を実施。
⇒情報はホワイトボードに記入。時系列的にどんなセクションが動ているかを一目で見ることができる。災害ボランティアセンターでは派遣しにくい、危険を伴う専門集団や民間企業の活動などの依頼 ⇒ 2層の支援体制があるといい。
水害で直面する課題とその解決法 ※水害をきっかけに心の距離が近づいた
1.どこにいつ逃げればよいか・・・地区ごとの避難マップをつくり、訓練を実施。
2.災害ごみをどうするか・・・事前に仮置き場を決めておく。
3.お金にまつわる問題・・・公的制度や義援金配分だけでは賄えない。さらなる被災者再建支援法を…。
4.人口流失…空き家の増加
5.地域の落ち込み・・・飲食店の廃業 次に災害が起きると、まだ立ち直れる状態でなくともここは過去の被災地になってしまう。
6避難所から出た後の個人の状況が分からない。(個人情報の把握は限界がある)
7.心の問題の悪化…孤独や生きがいの消失、「炊き出し」という言葉への抵抗感 ⇒「サロン」に変更し、物を配りながら互いにおしゃべりする。心の不安を出す工夫をできるだけ外部からの支援を断らない。
JUNTOSの支援(その2)
定期的な県や市。社協名など6社協議
自治会・回覧板の代わりに被災者へ避難所や住まい・義援金の情報など復旧に関する情報を共有。一方で被災者の困りごとを聞き取りして行政に提出。
ワークショップの開催 ⇒ 復興計画へ市民の参画を支援。お母さんの声、農家の方など。
被災で生まれたチャンス
外国人との心の距離が近づく。空き家を貸して一緒にやっていこうという雰囲気に…。
安い費用でJUNTOSハウス設立 その後も閉院した病院を改装し、えんがわハウスを完成。多国籍の子どもむけ保育園や学童保育を併設し、住民の交流拠点に…。
自主防災について
行政はタイムラインの作成の重要性について話題にするが、大事なのは「どこに誰と」が大事。そのうえで地区単位に障害者やベビーカーの人も加えた避難マップを作るのは大事…国土地理院の地図を利用。さらに学校や子どもたちも交えた避難訓練や避難所マニュエルも作成しよう。高齢者への連絡もショートメールを利用。外国人には英語で..。.一斉配信可能。
避難所開設訓練
中学校で役回りを決めて実施。発電機の使いかたや和式トイレの体験。自治会や自主防災組織で避難所開設のための道具(衣装ケースに道具と発電機とダンボーるベッド)の所有し、どこでも避難所を開設できるようにする。オリジナルの防災セットともぜひ用意を・・・台風が近づいたら、酒をもって集まろう的なノリで。
福祉避難所開設訓練
福祉避難所の開設準備が難しい中、大事なことは一般避難所にもバリアフリー的な要素を備えたNPO型福祉避難所を作っていくのも大事では?障害のことをわかる人、子供や、ペットおばあちゃんも連れて行けるっていう避難所を、むしろ地域にたくさん増やす、そこを訓練するってことをぜひそのためには日頃からのつながりを大事に、みんなで知恵を出し合って、皆が安心できる避難所を作ってほしい
【ワークショップ①】①災害支援 私の団体でできること
今回のワークショップは、参加者全員の顔が見え、全ての意見を聞くことができるように円卓形式で、講師の横田さんにも参加いただきながら進めました。
まずは全員に限られた時間のなかで(1分間)所属する団体に上記のテーマについて話していただきました。
事前に用意をお願いしていたこともあり、また、横田さんのお話の感想なども随所に入れながら、皆さんとても上手にテンポよく話してくださいました。
(中には会議後、「1分間では十分話せなかったから」と意見をまとめた紙を担当者に預けていく方もあり、災害支援に関する皆さんの熱い思いが伝わりますした)
その後、支援に関するテーマをいくつかに絞り意見交換を行いました。
≪ペットの避難について≫
・ペットの管理は飼い主の責任。避難場所は確保したいが、できるだけ他の避難者への配慮をしてほしい。
・避難所ではペットといえども雨風がしのげる場所を(昇降口など)用意したい。
・避難所に一緒にいてはいけないのか?生き物と一緒に過ごすこと自体が人間が健やかに暮らせている証拠だと思う。殺伐とした避難所だからこそ、ペットで心をいやしたい。
・みなし仮設に行けば(仮設住宅に準じて借り上げた民間賃貸住宅)ではペットの飼育はほとんど許されていないのが現実。⇒今後、一歩踏み込んだペットの避難所について考えることが必要。
≪避難所を快適にできる要素とは何か?≫
・行政職員による避難所運営は、人数を数え、弁当を配ることまで。避難者はお客様状態で避難してはいけない。
・日ごろから避難所設置に対する準備と訓練が必要。
・常総市では中学生にHUGゲームを経験してもらい、避難ルートマップを作った。防災については、子どもと一緒に活動することも効果的かもしれない。
・レクリエーション協会では、コロナ禍で子どもには密にならないゲームを、身体を動かす機会の減った高齢者に介護予防教室を用意している。全国組織で東日本大震災以降準備をしてきたので、お呼びがあれば、すぐに伺いたい。遠慮なくお声がけを!
⇒自分たちで地区の防災計画を立てる必要がある。自分たちが暮らす避難所と意識が必要。
≪障害者の避難について≫
・障害の内容は一見すると分からないものがある(精神障害や発達障害の人)
・精神障害者に対する周囲の理解が低く、地域へのハードルが高いので、症状によっては避難所へ行けない。
⇒障害のある人とどんなふうに接すればよいか?気を付けるべき点は?など、ポイントを押さえて地域の人に声掛けすれば交流もでき るのでは?災害時、近所の助けあいが効果的なので断然効果的なので、普段から理解のある仲間 をつくっておきたい。
≪高齢者の避難について≫
・自治会には要介護者の名簿が届くが、その対応策が悩ましい。
・以前より私の自治会・自主防災組織では、「こんな理由があるので、災害時には助けてください」「こんなこんな時は助けます」と自 己申告してもらい、自治会の役員でその情報を共有していた。街自体が高齢化してきた今、外部にも公開する(= 鍋をつつき合う仲間や関係性)必要があるのではないかと感じている。
・自治会での集まりというのではなく、支え合いの会のイメージで付き合っていきたい。
⇒気軽に自分の弱点が言える地域の住民でいたい。
≪外国籍の人、特にアフガニスタン人について≫
・「知らない」ことが災害時の課題になっている。普段のことを知っていれば問題はない?
・国民性もともかく、言葉の壁が大きいのが課題。団体として何とか市民との交流の場を作りたいと思っているが…
・互いが信じあえるような信頼関係をつくりたい。
【ワークショップ②】繋がりのツール
現在、ネットワークのメンバーは、事務局の発信するEメール(メーリングリスト=一斉発信アプリ)で情報共有や参加者の募集などを行い「みんなで災害支援ネットワーク」のFacebookページで外部への情報発信を行っていますが、まだまだ十分に活用できているとはいえません。そこで、日常的に情報交換のできる手段としてのツール、使いやすく発言のしやすいツールは何かについても意見交換を行いました。
・みんなで災害支援ネットワークの会が立ち上がり1年がたち、講座を開催するごとにメンバーも増え、その設立趣旨も次第に地域に広まりつつあるといえます。ネットワークは同じ地域でメンバーを違えながら、何層にもまたがって存在することで、ネットワークの力はさらに発揮できるものと思われます。メンバーの皆さんが主体的に動き、繋がり、助け合っていけるように、事務局のみんなで地域づくりセンターは今後もしっかりとバックアップしていきたいと思います。