「ひみつのおしゃれ」を楽しめるのは、大日の住宅街の中にあるミントグリーンの小さな平屋のお家。入り口を入ると手前が古着屋さん、奥にはいろいろなタイプのミシンが置かれたひみつの工房。工房からはミシンやアイロンから勢いよく吹き出すスチームの音が聞こえてきます。

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店主の佐々木和枝さんは小学生の頃から裁縫が好きで、お友だちの着るおしゃれな洋服に興味を持っていました。
そして小学生の時,担任の先生に「和枝という名前は平和を枝のように広げるという願いが込められているんじゃないかな」と言われた言葉が残り、そんな大人になりたいとも。

あるとき、たまたまテレビで見たチャリティーコンサートで、佐々木さんは「好きなことを極めることでも、自分のためだけではなく、人の役に立つことがある」と知りました。それは自分にとっては「洋服作りだ」と目指すものが決まった瞬間でもありました。そうと決まれば学ぶだけ。両親に反対されるも都内の服飾専門学校へ進学。洋服作りを一から学べたことは楽しかった、と話します。

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卒業後、自ら身を投じて世界各国で経験した貴重な経験は紙面でお伝えした通りですが、すべてが佐々木さんの現在とこれからの生き方・働き方を決める重要なファクターとなりました。

次に思ったのが「古着のリメイクであれば、事情があり十分に外に出てこられない人にも仕事を出せるんじゃないか」ということ。子どもの頃から所属していた市民活動団体でのお節介なおばちゃんに助けられた経験が忘れられず、その経験から今度は地元で工房を開く決心につながりました。
工房で佐々木さんを支えるのは、事情があって外で働くのが難しい人たち。お仕事は裁縫や袋詰め作業などその人に合わせて自宅でできる内職です。「みんなの自宅がひみつの工房なんです」。佐々木さんは納期に余裕を持たせるなど、内職さんたちの生活の負担にならないように気を配っています。

 内職で働く皆さんに話を伺うと「出産したばかりで子どもが小さく、近所でお仕事ができるのは助かります」「子どもの持つ障害は急に仕事を休まなくてはいけなくなることが多く、パートは難しいので自宅でできるお仕事は助かります」。なにより外との関わりができることが嬉しいようでした。
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 佐々木さんのこれまでの人生経験が大きく影響してできあがった「ひみつのおしゃれ工房」。その思いが形になった時、今度は捨てない暮らしと雇用が結びつくことでさらに地域づくりへつながりました。
自分の好きなことを極めて、世の中の役に立ちたいという思い、サスティナブル(持続可能)やエシカル(人や社会、環境に配慮した)という言葉を大切にし、洋服に関わる活動を続ける佐々木さん。まだまだやりたいことがたくさんあるそうです。