四街道には市街地から10分ほど車を走らせると、自然豊かな里山が点在します。

  そのひとつ、成山に住む任海正衛さんは、高校の物理教師を務めながら地域の自然環境を守るため、約25年前に奥様の実家のある四街道に移住。その後教職を早期退職し、環境保全活動を始めました。目指すのは「昭和30年代の環境循環型社会」。「自然は子どもの成長や、大人が心にゆとりを持つために必要な場所であり、大人が守っていく義務がある」。任海さんの持論です。

  現在は、「NPO法人四街道メダカの会」の代表として、さらに栗山みどりの保全事業とし六つの団体が意見を出し合い「たろやまの郷」で保全活動を進める「たろやま会」でも活動されています。その一方で自宅の広大な敷地や畑を子ども達の野外保育団体や障害者施設などに提供し、いくつもの市民団体もとつながっています。「たろやまの郷同様に成山でもさらに自然保全を進めたいと考えています」。

 野外保育の子ども達の活動基地ともいえる敷地内にある「メダカ亭」に伺いました。シンボルの大きなやぐらは重機を使わず、メンバーの力だけで作られたそうで、太く大きな梁が印象的です。天井から下がった縄には木製のブランコの座板もついています。まるでここに集う子どもたちを温かく見守ってくれているようです。広場には大きな釜や人がくぐれるほどの大きな配管もありました。 釜で火起こしをして料理をする様子、あらゆる物を使って遊び道具にしてしまう野外保育の子どもたちの様子を話す任海さん。くしゃっとした笑顔で本当に楽しそうでした。

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   災害がおきたら…と話を向けると「地域に困ったことがあれば、日頃のネットワークを使ってなにかしら役立てると思います」と心強い言葉。「倒木処理や子ども、障害のある人の支援など普段の団体の活動はもちろん、さらに各メンバーが持つさまざまな知識や経験がきっと地域や団体間の困りごとに役に立つはずです。もちろん、自宅に被害が出た人たちはここで過ごすこともできますし」。東日本大震災後、福島・双葉町から避難された方に農作業などを経験してもらい、この地が心のよりどころとなったこと、千代田の皆さんにチェーンソーや草刈り機の使い方を学んでもらったことなど災害にまつわる具体的な支援の話も尽きませんでした。

「災害が起きたら、自分たちの最終的な生活の復旧・復興は行政や災害ボランティアセンターではなく、NPO が主体となっていくと感じています」。たくさんの団体とつながり、活動を重ねる任海さんだからこそ、その言葉は現実味を帯びて聞こえます。

 コロナ禍とはいえ、災害はいつ起こるかもしれません。もしもの時、知らない人たちと慣れない避難所での生活は想像も及びません。とくに市民活動をしていなくとも、同じ地域に住む者としてその時のためにできることは何でしょうかー。まずは近所の方との「あいさつ」を交わし、知っている誰かを増やしていくことから始めてみてはいかがでしょうか。取材を終えて改めて提案したいと思います。