6月14日のお昼前。市役所脇のイタリア料理店前は、傘を手にしたマスク姿の人たちでにぎわっていました。今日はこのイタリアンバルGOCHIと近くの和菓子店IZUMINOが共同で開催するテイクアウトコラボ企画の日です。
もともとオーナーのお子さん同士が同級生で、開業前から知り合いだったという両店舗。共にコロナ禍で集客に悩む飲食業界、流れを変えるチャンスをつかみたいとIZUMINOがもちかけた企画でした。
創作和菓子を中心に製造・販売するIZUMINOは人気商品のラインナップにこの日限定のくずもちを加えて品ぞろえ。一方ふだんはイートインが主体のGOCHIは、テイクアウト用にこの日限定のバーガーやパニーニを準備しました。
開店1時間前。
バルの厨房からは肉を焼く良いにおい。店頭では、2店舗分のタープやパラソルが手際よく並べられます。指揮をとるのは、「グルメチック四街道」などの市民団体が主催するイベントに何度か参加したというIZUMINOの明子さん。
全員でお釣りを用意したり、商品を陳列したりと準備に余念がありません。
気になるのは、空模様です。
開店30分前。
店前にはお客さんたちが距離をとって並び始めます。それは、長らく見ることのなかった懐かしい風景。このイベントは、両店がSNSを使って告知したそうですが、その反響は大きかったようです。
並んでいる皆さんに話を聞くと「今日は夫と買いに来ました。本当はGOCHIさんのこと、お友達とのランチ用に秘密の場所にしたかったのですが…」といたずらっぽく笑う女性。「毎日不安と使命感をもって介護の仕事を続けています。今日は留守番を
頑張っている子どもたちと自分自身へごほうびに特別なランチを買いにきました」とお子さんを連れたお母さん。「ずっと家にこもりきりだったので、たまにはおいしいものを食べたいなと思って」という若い男性もいます。
そして11時、いよいよ開店。お客さんの列がゆっくりと前進し始めます。
ランチもデザートもとどちらの店のコーナーものぞく皆さん。どれを買おうか商品の前で楽しそうに悩む姿は、子どもも大人もみんな一緒です。
お店当番は、どちらも小・中学生になるお嬢さんたち。途中からはお友達も応援に駆け付けます。その姿はみんなが自然で楽しそうで、日頃からよい関係が築かれていることをうかがい知ることができました。途中からはあいにく雨も本格的に降り始めましたが、すべての商品が「完売」となるまでの1時間、お客さんの整然とした列は途絶えることはありませんでした。
後日改めて明子さんに話を聞きました。「今回のイベントは、反省することばかりでした。せっかくたくさんの皆さんに来ていただいたのに販売と商品の受け渡しを効率的に行うことができなかったこと。雨でお客様を濡らしてしまったこと…。とはいえ、予想以上に反響が大きかったのがなにより嬉しかったです」。「コロナの影響で、多くの飲食店が苦慮しています。国や自治体からの補助金も助かりますが、私たちも地域の皆さんに利用してもらう工夫が必要だと思っています。たとえば、今回のような複数店舗のコラボ企画。コロナの感染予防はもちろん、食中毒などクリアしなければならない問題もたくさんありますが、それは店舗側が考えること。もしそんな場所や機会を提供してもらえば、個性あふれる味を皆さんに楽しんでもらおうと考える飲食店はたくさんあると思います」。
最後に明子さん、今回の反省をじっくり行ったらいったん充電、機が熟したら、再びおいしいもので地域と関わっていくアイデアをいろいろな形で提案していきたい、と話してくださいました。